夢を叶えるオーディション

芸能活動だけで人生を終わらせる?

人の生き方はひとつではありません。そして、「働ける時間」というのは生涯の中でも限られています。たとえばアイドルになりたいとします。努力が実り、運もあってアイドルとして表舞台に立てたとします。しかし、それは一生続けるわけにはいかないはずです。女優であればわかりません。もしかすると一生続けられるかもしれません。ですが、「ポピュラー」なものほど廃れる傾向があります。ポピュラーな存在として表舞台に立てたとしても、そのポジションを一生貫くことは難しいのです。そして、「仕事」がなくなることは収入がなくなることを意味します。人は収入がなくなると生きてはいけません。
若いうちは夢を追うことに必死になれます。今は夢のない時代と言われています。大学を出ても「働きたくない」という若者も多いのです。「やりたいことがある」というだけで、人生は輝かしいものになります。夢があるだけで毎日が楽しくなり、惰性化しない日々が送れるのです。ですから、オーディションを検討して夢の実現に向かうことは大賛成です。ただ、何があっても生きていける人間力のようなものは必要です。芸能一本でいくにしても、他にもできることがあれば決して無駄にはなりません。それを一種の「滑り止め」と考えて毛嫌いする人も確かにいます。ですが、生涯80年以上のことを考えると、選択肢は多すぎるということはないのです。
実例として、音楽系のアーティストはその道を極め、「人に教える」という第二の選択をされているケースが多いようです。アーティストとして表舞台に立っていたときよりも実力が伸び、演奏者として円熟したスキルを眠らせておくのがもったいないからです。この際必要になるのが「演奏者としての力」に加えて「指導者としての力」になります。自分ができるだけではなく、それを指導する相手に伝え、成長させるということです。これは誰にでもできることではありませんし、相手の個性やそれに伴う成長の仕方、習熟度などを見極める眼力も必要になります。次世代の育成という新たな目的は、自らが信じてきた音楽の道、そして経験してきた演奏者であるが故の悩みやぶつかるであろう壁などをうまく伝えて、音楽界の発展を促進する有意義なものです。若いころはアーティスト一本であってもいいのです。ですが、時が経過するにつれ見えるものも変わりますし考え方も変わります。アーティストとして活動が出来る環境がずっと維持できるということも少ないですから、その後の自分はどうすべきかということを考える必要は、多かれ少なかれあるのです。
これは普通の会社員でも「定年後どうするか」ということに似ています。新入社員のうちからそんなことを考える人は少ないものですが、芸能という流動的な世界を志すのであれば、あらかじめ第二、第三の選択肢は必要だと思われます。生きていかなければ芸能スキルを発揮することもできないのですし、生活基盤が安定しないとスキルを磨くこともできません。不安定な世界を志す以上、何があっても「続けられる」基盤が作れるようにしておくことは大切なのではないでしょうか。そのためには、様々な知見、様々なことに対する興味、社会人としての節度など、当たり前のことも兼ね備えておく必要があるのです。

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